ものはためし

書く訓練、備忘録

たましい

起きたら部屋が暑すぎてクラクラした。クーラーをつけて寝たがタイマーにしていたので起きる頃は切れていて、しかも二度寝したりしたのでかなり蒸し風呂になってしまった。

暑い。

最近かなり頑張らねばならんことがあり、わたしは緊張するとご飯が食べられなくなるほうなのでかなり体重が落ちた。そして緊張するイベントは終わったが、そのまま自然な流れで夏バテが始まった。夏はこれだから困る。日照時間が長くて精神的には浮き上がる反面、ご飯が食べられなくなって身体は弱る。冬はご飯が食べられるが精神が落ち込む。どっちかと言われれば夏の方がいいがそれは相対的な話であり、食欲も精神も良好なのがいいに決まってるんだよ。

やっとこさ辿り着いて乗り込んだ電車は涼しかった。助かった。手の甲にぷっくり浮き上がった血管が次第に目立たなくなっていくのを眺めた。

‪地下鉄に窓あるのおもしろいよな、何も見えないはずなのに。‬しかし何も見えないわけではなかった。暗いトンネルを照らす蛍光灯が電車のスピードで横へ横へと流れていく。

この景色を見るたび、死んだらこういうところに行くのかなと思う。何もない暗闇を、魂たちだけが光の尾をひきながら飛び交っている空間を想像した。一体どこへ向かうのか分からないけど。わたしは魂を信じていないし死んだら無になると思っているくせに、こういう想像はたまにする。

 

 

一日中セミの断末魔がやまないので気になって窓から覗くと、隣の家の雨樋にセミが一匹ひっくり返っているのが見えた。雨が降りはじめると屋根から流れてきた雨水が容赦なくセミに直撃するのだった。しかし雨樋を流れていくだけで水はたまらないので、溺れるほどでなく、ただじわじわとセミを苦しめていた。脚と羽をばたばたさせて水滴に抗おうとするが、おそらく雨樋から飛び出すほどの力はもうないだろう。

雨樋に落ちようが落ちまいがいずれ落命するであろうセミのことを思った。助けてやりたいが物理的に手が届かないし、拾い上げたところで寿命なんだからどのみち助からないんだ。

そのうち、うるさいなという気持ちになってきた。ジジジという断末魔が夜になってもずっと止まなかったからである。さっきまで助けてやれないか考えていたというのに、そのセミの死に際をうるさいと思うことは倫理的にどうなのか考えた。まあわたしの人生はわたしを中心に回っているのであり、うるさいと思うこと自体は仕方ないことだと結論付ける。うるさいと思うことと、うるさいと言うことと、うるさいからそのセミをどうにかしようと思うことと、実際セミをどうにかすることとは、全て全く別のことである。

 

次の日起きると、もううるさくなかった。