ものはためし

書く訓練、備忘録

トンビと目があったよね

少し前の旅先。

雪の残る展望台で、おそらく生まれて初めて、コイン式の双眼鏡に百円玉を入れて覗き込んでみた。自分のまつ毛がレンズに当たって虫のように見えて邪魔だった。あ!車だ!遠くの車がはっきり大きく見える!などと言ったがわざわざ百円払って他人の車を見てどうする。景色を見ねば。しかし霧が出ていて、霧がかった景色は望遠で見ても霧がかっているのであった。

旅館の朝、中居さんが入ってきて、新聞紙です、と言って差し出した。新聞紙というとその紙そのものを指すことが多く、情報のことを指すのなら新聞というように思ったので、(新聞を読むと言うが新聞紙を読むとはあまり言わないし)なんだか面白かった。

帰りの特急までまだ時間があったので、誰だかのゆかりの公園に行ってみた。そこにはまた展望台があり、プールの飛び込み台みたいに唐突に、階段だけで構成された建物だった。4階か5階分登ると、日本海が見えた。昨日の別の展望台では霧が出ていて見えなかった日本海だった。これは登ってきてよかったな。私たちはベンチに腰掛けてチョコレートを一欠片ずつ食べ、ペットボトルの水を飲んだ。公園に来る道すがら前を通った浄水施設の建物が真下に見下ろせた。屋上がテニスコートになっており、おじさんたちが休日を楽しんでいた。ふと見上げるとトンビが飛んでいた。羽ばたかずに気流に乗って私たちの頭上を舞っている。狙われている!私たちはそそくさと階段を降りた。

そんなことがあったのです。