ものはためし

書く訓練、備忘録

豆と一緒に寝る

職場のぞうきんの上に何かよくわからない羽虫が横たわっていたので片付けようとして近付いたら、胴体の色が青いキラキラで、一人で眺めるのはあまりにもったいなく、誰かに見せたいと思った。ぞうきんごとつまみ上げて上司のところに持って行って見せたところ、おーと言って引き出しから虫眼鏡を取り出して見ていた。わたしも虫眼鏡を貸してもらいよく見てみたけどやはりきれいだった。
なるほど虫眼鏡というのはこういう風に使うから虫眼鏡なんだなと思った。
隣の島の人が我々の様子を見て、「平和な午後だなぁ」と言った。

 

人の家に行ったとき、新しいコーヒー豆を買ったというので嗅がせてもらったところ、いい香りのあまり離せなくなり、「豆と一緒に寝る!」などと言ってずっと抱えていたが、結局寝るとき邪魔になったから返した。豆はすぐ冷凍庫にしまわれた。

 

川を渡り始めたとき、向こう岸の方に鴨が泳いでいるのが見えたのでわくわくして近づいたが、よく見ると死んだ魚だった。鴨くらいの大きさの魚が浮かんでいるところを想像していただきたい。魚というのはもともと空気に触れて生きているものたちと身体の作りが全然違っていて見慣れないし、なんというかグロテスクな見た目だとわたしは思う。だから勢いよく動いて、かつ水の中にいるくらいがちょうど見ていて楽しいのだ。しかしそれは大きい上に動いていないししかも浮いていたから、そんなに見ない方がいい、と思ったのだけど、橋の真下にそれが流れ着くまでじっと見てしまった。

 

七夕だというのに雨が激しく降っており、昼過ぎですでに夜くらい暗かった。エレベーターで一緒になった同僚に「夜みたいに暗いですね」と話しかけられて、全く同じことを言おうとしていたのでおもしろかった。エレベーターでの会話というのは、目的地に着くまでのかなり限られた時間で話を終えないと、着いた時変な感じになってしまうので技術を要する。1往復か2往復くらい。それで必然的に天気の話か、仕事忙しいっすか、ええまあ。という感じの会話になるんですな。

全く知らない人とエレベーターに乗り合わせたときは会話もないので楽かと思いきや、手持ち無沙汰でなんとも居心地が悪い。そんなときには階数の表示なんかをじっと見つめてやり過ごす。最近は、上の方に書いてある定員の表示を見て時間を潰すことを覚えた。たいてい想像以上に多い。どのフォーメーションで乗ればその人数がこの空間に収まるのか?誰も荷物を持ってない前提かしら。子どもの数も入れていいのならなんとかなるだろうか?肩車とかしてもいいん?んなわけないか。

「チーン!一階です」