ものはためし

書く訓練、備忘録

新しい服とちょろりん

新しく買ったお気に入りの服を着て学校に行ったけれど、色々と面倒になったので午後の授業をさぼって本を読んでいた。海の向こうの街まで見渡せて、風がよく通る石の段々に座って。

小さくてきれいなとかげが前を横切った。尻尾が青くきらっと光っている。私は突然『ちょろりんのすてきなセーター』を思い出した。子供の頃に大好きだった絵本だ。

とかげのちょろりんが、洋服屋さんのショーウインドーですてきな春色のセーターを見つけて、そのセーターに夢中になる。ちょろりんはランプ職人のおじいちゃんの元で一生懸命働いて、もらったお金をにぎりしめて洋服屋さんに向かう。ちょろりんを待っているのはヒキガエルのびきびきおばさん。どっしりしていて、なんだかこわい。ちょろりんは勇気を振り絞って、びきびきおばさんに、セーターを下さいと声をかける。びきびきおばさんは笑う。いいけどあんた、それ、へび用のセーターだよ。へび用のセーターには袖がないから、とかげのちょろりんには着られない。ちょろりんは悲しくて悲しくて泣いてしまう。それを見たびきびきおばさんが、セーターをとかげ用に仕立て直してくれる。ちょろりんは大喜びする。

 

確かこんなお話だった。新しいお気に入りの服を着た私の前に現れた、何も着ていないきれいなとかげ。ちょろりん、もう春色のセーターの時季は終わったね。今は暑いから何も着てないのかな。ご自慢の尻尾をきらきらと振りながら、どこへ向かうの。私も連れて行って。