ものはためし

書く訓練、備忘録

女である

クリスマスの夜、サンタの人形がしあわせな色に照らされるショーウィンドウの前を通り過ぎ歩いた。目ん玉が冷えているのを瞬きするたびに感じる。

空に星座が見えた。名前はわからない。はっきりした点々。わたしは自分の頬にあるほくろとそばかすを思い出した。

次の日の昼に目覚めてから思い立って美容院に行った。髪をくるくるにしてもらうためだった。巻き髪が似合うと言われたからすぐパーマをあてるなんて単純である。

美容院には必ず雑誌があって、どうぞお読みくださいと差し出される。1番上にあった吉岡里帆が表紙の雑誌を手に取った。普段雑誌を読まないので読み方が分からなくて困った。とりあえず掴んだまま表紙をじっと見た。

仲のいい男は吉岡里帆を可愛いという。ガッキーと吉岡里帆は男みんな好きだと思う。確かにものすごくかわいいけどなんで男みんな好きなんだろう。

雑誌を開いてみた。吉岡里帆のインタビューを読んだ。彼女は本が好きらしい。わたしも本が好きなので嬉しい。

パーマの液が耳にかからないように耳にカバーを付けられたためになんだか顔全体が熱かった。

仕上がった髪を見せながら美容師さんが、どうですか、と尋ねた。わたしはうわぁ女の子みたいになりましたね、と言った。女の子ですよ、と言われた。

 

電車から外を眺めているとPPという文字が目に飛び込んできた。ポリプロピレン…?街中に組成表示があるとは妙である。よく見るとPPはポリプロピレンではなくパーキングマークのPの看板が乱視で二重に見えただけであった。

電車を降り、新しい髪型を見て似合うねと言ってくれる係に会いに行った。わたしは見せる係。

 

寝た。夢を見た。めちゃくちゃ歯の強い猫を飼う夢だった。猫はわたしの肩に飛び乗って、めちゃくちゃ固い何かの種をバリバリ噛んでいた。歯が強すぎる。金属さえも噛み砕く勢いに見えた。このままわたしも食われる、と思った。

まあ、その覚悟さえあれば食われてもいいが、覚悟はまだできないのだった。