ものはためし

書く訓練、備忘録

はなしのはなし

なんだか、新しい歯が生えてきそうな感じがする。親知らずはないから、なにも生えてくるはずはないのだけれど。

親知らずがないというのは、生まれつきではない。高校3年生の秋に、親知らずを抜いた。1本抜いて、2.3週間あけてまた1本、というように、最短期間で4本全部。受験期で、部活も遊びもせず、勉強しかすることがなかった。そんな毎日の中で、歯を抜くというイベントは、"ちょっとした刺激"になったように思う。

その時のことを思い出しながら少し書く。

小学生の頃から歯列矯正をしていた。高校生になる頃にはほとんど歯がきれいに並び、あとはそのきれいな歯並びを維持するだけという状態になった。レントゲンで親知らずの存在は確認できたが、すぐに生えてきそうな様子はなかった。しかし、もし親知らずが生えてこようとすると、それに押されて、整えた歯並びが多少崩れるらしかった。矯正歯科の歯医者さんに、あらかじめ親知らずを抜いておくことを勧められた。しかし、まだ生えてきてもいない歯を抜くのだから、普通の抜歯とは違う。口腔外科という、口の中の手術が専門の、すごい歯医者さんのところに行かなければならなかった。

 抜歯の前後は激しい運動をしてはならない。当時運動部に入っていた私には、部活を休んだり、数日間安静にしたりすることが耐えられなかったため、高3になって部活を引退してから歯を抜こうと決めていた。そんなこんなで、高3の秋にスピード抜歯が決行された。

 どういうわけか、私は痛みに強い。痛みだけでなく、味覚などの身体的刺激全てに強いのだが、長くなるのでそのことについてはまた今度書くことにする。(長い文章を書きたいなら今ここに書いてしまえよという声が聞こえるが無視する)

話を戻す。私は痛みに強いため、歯を抜いてもらうのにそれほど苦しまなかった。歯を抜く痛みよりも、麻酔を効かせるための注射の方が痛かった。もっというと、その注射よりも、歯を抜いてもらっている間ずっと仰向けに寝ていることによる頭痛のほうがひどかった。全体的にそんな程度だったので、歯を抜かれている最中も、衛生士さんかわいいなぁとか、歯医者さんのお腹が鳴ってるなぁ、お腹すいてるんだろうなぁ、歯医者さんは今日どんな晩ご飯をたべるんだろう、とかいうどうでもいいことをぼーっと考えていた。

 まあとにかくそんなわけで、案外あっさりと、入試本番が始まる前に無事全部の親知らずを抜き終えることができた。

 

だからつまり、なんの話だっただろうか。ああ、歯が生えてきそうだけれど生えてくる歯がないという話だった。認めたくないけれど、これは普通に虫歯かもしれない。痛みに強いとはいえ、できるならば虫歯の治療は避けたい。歯磨きを強化しつつ、もう少し様子を見ようと思う。

 

〈後日談〉

これを書いてから3日ほど経ったが、口の中の違和感はすっきり消えた。虫歯でなくてよかった。結局何だったのだろう。生えてくる前に抜かれてしまった親知らずの幽霊だったりして。