ものはためし

書く訓練、備忘録

一発書き(興奮している)

聞いてください!たった今すごくいいことが2つも起こった!
私が片脚棒みたいになってスムーズに歩けないからママが杖を貸してくれるって言って、持ってきてくれた。ママというのは私のお母さんではなくて、お母さんの友達のことなんだけど、わけわかんないよね。とりあえず、それで、ママが車でうちの前まで来てくれることになってたから、私は窓から外を見ながら待ってたんだよね。そしたらね!西の空に!流れ星が流れたよ!シューッと!(「シューッ」というのは超重音節だ。3モーラなのに1音節という珍しいやつ。まあそんなことはどうでもよくて、)本当にあれは流れ星だったのかな、違うかもしれない、でも流れ星だったらいいのにな、誰かあれは確かに流れ星だったよと言ってくれたらいいのにな、でも私しか見てなかったからな、と大きな声で独り言を言った。それからお母さんに、あれは流れ星でしたかね、と聞いたら、はいあれは流れ星でした、とお母さんが答えた。だからあれは流れ星でした。やったね。願い事叶っちゃうんじゃない?元気になっちゃうんじゃない?願い事、3回どころか1回も唱える余裕なかったけど。

そうやって騒いでいたらちょうどママの車が来るのが見えた。ママが貸してくれた杖はめちゃくちゃオシャレな上に、持ってみたらすごく歩きやすそうな安定感だったから、明日元気だったらそれを持って出かけたいなと思った。

誰のせいでもないマイナス

苦しい日々が続いている。何というか、身体的ダメージが精神にも響いてくるのを感じる。それで悲観的になるのは私の問題だけれど、そのせいで人にまで嫌な思いをさせるのが怖い。

例えば、いつもなら楽しめるはずのことが、お腹が痛いせいで楽しくないとか、せっかくおいしいご飯を作ってもらったのに食欲がなくて食べられないとか、よく分からない恐怖で家族に当たり散らしてしまうとか、おもしろい文章が書きたいのに苦痛を吐き出すことしかできないとか、そういうこと。そういうとき私は「これは本来の私の姿ではなく、病気のせいで変わってしまっただけだ」と考えて悲しみや罪悪感を軽減しようとする。「私は今、全ての感覚や思考が、痛みや恐怖に支配されている。何をしても、純粋な私の意思以外の要素が働いているのだ。今、見えている私の様子だけで私を判断しないで欲しい。それは、本当の私ではないから」なんて、思う。

けれど、そもそも本来の私とは、どんなものなのか。そんなに守りたい人格だったのか、分からない。分からない。

何か自分にとって大きな出来事があったとき、それが起こる前と後ではまったく違う自分であることは分かるのだが、具体的に何が変わったかと言われると分からないものだ。私は病気のせいで自分の人格が歪むことを恐れるが、病気がもたらす変化は悪いものだけではないと思う。忍耐力や、考え方にいい影響があるのかもしれない。そんな全てを切り捨てるわけにはいかない。そもそも、私が望もうが望ままいが、病気が治るわけではないのだ。

私は不幸自慢がしたいわけではない。そんなのは、かっこ悪いし自分をさらに不幸にすることだと思っている。私が病気なのは私のせいではない。でも、家族や友達のせいでもない。だから周りの人に当たり散らすのは絶対に違うのは、分かる。この、誰のせいでもないマイナスは、誰のせいでもないのに、誰かが我慢しなければならない。本来ならそれは私である。しかし一人で全部背負うのは長く続かないし、現にそれがもう無理になったから親を頼って実家に帰っているのである。できる限り、家族や友達に頼ること。でも、頼りすぎないこと。本来私が背負うべき荷物を、周りの人が優しいから一緒に持ってくれてるだけなんだという意識を持って、いつも感謝を忘れないで。難しいけど、そうするしかない。

【今なら‼︎】悪夢3本無料‼︎‼︎【おトク‼︎】

怖い夢を見た。しかも3本立てである。何か不調があると悪夢を見やすいが、今日のは明らかにそれであった。

1つ目は、なぜか自分が友達のSNSを乗っ取ってしまい、そこから大きな事件が起きて警察に捕まりそうになる夢。地元のヤンキーが仇討ちにやってきたりしてひたすら怖いが、元はと言えば自分が友達のSNSを乗っ取ったのが悪いのであって、私はその仕打ちを受けるのが当然に思われた。罪悪感と恐怖でガタガタ震えながら目が覚めた。

 2つめは、高校の部活仲間と一緒に学校から競技場に移動する間に、なぜか乗っている最中なのに自転車を盗まれてしまう夢。そこで走りまわって自転車を探すのだが、その途中に前のバイト先に居た怖いパートのおばちゃんと出会う。私は大荷物で走り回るのは邪魔なので荷物をしばらく見張っていてもらえないかと頼む。パートのおばちゃんはセーラー服を着ており、彼氏と待ち合わせしていて、それがどうやら待ちぼうけを食らっているところのようで、機嫌が悪かった。そのせいで私は無駄にお説教をくらった。パートのおばちゃんにごめんなさいをして、私は急いで歩き始めた。この辺で当初の自転車を探すという目的は消えかけていた。まあそれでも狭い路地を進んでいくのだが、夢でよくあるように足が全く動かない。そこで私は壁や標識の柱を手で掴んで身体を引き寄せる方法でなんとか前に進もうとした。そのへんでだんだん、「こんなに進めないなんて、これは夢だ」と気づいて目が覚めた。

時計を見ると7:30だった。もう起きてもいい時間である。隣を見ると母がまだ寝ていた。もう一度寝るとまた悪夢を見ると分かっていたので寝たくなかった。だから目を見開いてじっとしていた。なのに、また夢を見た。

3つ目は、幼い頃の夢であった。3歳くらい。兄と一緒に風邪をひいて、布団を並べて寝ていた。兄とは6歳差なので本当はそんなはずないのだが、夢の中では兄も私と同じくらいの歳だった。そこに母が来る。母は私たちの頭をなでて、薬を飲もうねと言う。兄と私はなぜか、その薬を飲むと自分たちが死んでしまうことを知っていた。しかも家が貧困とかで、もうやっていけないので母が私たちにそれを飲ませるのであった。それも分かっていたので尚更、私たちはそれを飲まなければならなかった。兄はすんなり飲んでしまう。私の番になる。私も飲まなければと思うのだが、死への恐怖が優ってどうしても飲めない。薬を飲む前にどうしてもトイレに行きたい、と言って逃げ出す。トイレに駆け込んだ瞬間、時が流れて、私は大きくなっていた。結局薬を飲まなかった未来へ飛んだのだった。兄はいなかった。代わりに姉がいた。最初のシーンでは姉はいないことになっていたのに、そこにいた。後になって姉が生まれるというのはおかしいのだが、夢の中ではそれがありえた。家の貧困はなんとかなったようで、私は結局助かり兄は幼いまま死んだ。そして平和になってから姉が生まれたのである。めでたしめでたし。後味の悪いまま目が覚めた。

 

人の夢ほどどうでもいいものはないと常々思う。小さい頃父親が、毎朝のように自分が見た夢の説明をしてきて面倒だった記憶がある。しかも父は、夢の中でお前がこんなことを言ったぞ、とまるでこちらが悪いかのように責めてきたりしてタチが悪かった。

 夢は全て自分の頭の中で起こっている。だから自分の関心ごとのオンパレードである。つまり、多分自分が一番、面白いのだ。夢は売るほど価値がない。無料でもいらない。それを、こうして押し売りするのである。

「お買い上げ頂きありがとうございました。おおきに。またお願いします。」

お風呂

お風呂に入るのが好きだ。特に、人と一緒にお風呂に入るのが好きだ。と言ってもそんなに他人とお風呂に入る機会はない。だいたい一緒に入ってくれるのは、姉である。

 実家に住んでいたころは、毎日お風呂に姉を誘った。姉から一緒に入ろうと言ってくることはほとんどない。おそらく姉は私ほどお風呂が好きでない。必要に迫られるまでできるだけ入らずに、部屋でごろごろしているのを好むようだ。そして、私が入るとき必ず誘うのだが、結構な確率で渋る。そして、後から行くから先に入っといて、と言う。そして私は1人でお風呂に入るけれど、そういうときだいたい姉は来ない。関西人の「行けたら行く」はほとんど「行かない」という意味だというけれど、姉の「後から行くよ」はそれと一緒だと思う。

まぁ、そんなのは置いといて、運良く姉の機嫌がよく、一緒にお風呂に入ってくれるとき、私はわくわくする。なぜだろう。分からないけれど、楽しい。

姉は暇さえあれば携帯をつついている。私が話しかけると聞いてくれるし返事もするが、私はどうもそれが気に入らない。お風呂にいるとき姉は携帯をつついていないので、私の話をしっかり聞いてくれるし自分の話もするので、私はそれが嬉しいのかもしれない。

結局のところ、お風呂が好きなんだか姉が好きなんだか分からないな。でも私は銭湯も好きで、銭湯に友達がついて来てくれるときいつも以上に嬉しくなる。だからやっぱり姉が特別好きとかではなく、人とお風呂に入るのが好きなんだということにしたい。

 これだけ書いた後でいうのもなんだが、1人でお風呂に入るのも悪くない。考え事が捗るし、あと、何と言っても結露した壁が好きである。お風呂は、冬の朝の窓ガラスと違って、常に蒸気に晒されているので、絵や字を書いてもしばらくするとまた結露する。だから、書いては消して書いては消してを繰り返しできて、楽しい。考え事をしながらそれをどんどん指で書く。細かく、板書みたいに。あと実家のお風呂の壁はタイルで、それをノートのマス目みたいにして大きく丁寧に字を書くのも好きでいつもやっていた。

 今住んでいる下宿の部屋はお風呂とトイレが一緒になっているので、お湯をためてゆっくり浸かるということができない。だから人と一緒には入れないし、壁に字も書けないし、お風呂のいいところがほとんどない。これには理由があって、お風呂とトイレが別々になっている物件はだいたい家賃が5千円くらい高かったのである。だからそれをケチって今の部屋にしたが、月々5千円を超える価値が、広いお風呂にはある気がする。お風呂以外のいろんな部分は今の部屋で十分なので引っ越すほどではないが、次引っ越すときはお風呂をしっかり見て物件を決めたい。

ちょっと病気だけどいいこともある

1月に入ってからずっと体調が悪い。

ずっと寝込んでいると布団が不快な感じになるので、タイミングを見計らって外に干す。その間はこたつに潜り込んで、じっとしている。

仰向けになって、白い天井についている白い照明器具をぼーっと眺めていたら、気づくと照明器具がなくなっていた。焦点の問題か、ぼんやりと輪郭が消えて天井と同化して見えた。(どうかしてるぜ。)それが面白くて私はひとりできゃーと言って、瞬きをするとまた照明器具が天井についているのがはっきり見えた。もう一度消してみようとじっと天井を睨んだが、意識するとできないのだった。

ここのところ、薬局にかっこいい薬剤師さんが いるのが癒しだ。なんというか、いわゆるイケメンという感じではないのだが、決してチャラくはなく清潔感があって人畜無害そうな、優しい声の持ち主である。あんまりじろじろ見るとよくないのでできるだけ見ない。たまたまその薬剤師さんから薬を受け取れたときはもうめちゃくちゃに元気が出て、もうそれを飲まなくても治るんじゃないかとか思ってくる。我ながら気持ち悪い。けれど、自宅で苦しむか病院にフラフラ出かけるかの日々が続くと、そういう喜びを見つけないとやっていけなくなる。待合室の雑誌で読んだ旅行特集がいい感じだったから旅行したくなったり、MRIの間ヘッドホンをつけてミスチルを流してもらえたこととか、検査の帰りに買い物したりとか、女医さんが美人とか、大好きな友達がごはん作りに来てくれたとか、街のバリアフリーを感じるとか、バイト先に理解があってしばらくお休みをもらえたとか、教授にメールしたらレポートの期限を猶予してもらえたとか、どの内臓がどこにあるか実感できたり、身体の仕組みが分かったり、お正月太りの分くらいは体重が落ちたり、ずっと寝込んでるとメイクしないのでお肌が生き返ったり、あと、かわいいお薬手帳をゲットすることを夢見たり。

頭の中は苦痛が大半を占めるけど、いいことだってたくさんある。最近は苦痛に負けて、ネットでもネガティヴなことばかり言っている気がするから、こうしてちょっとは釣り合いをとりたかった。心配しないでください、と言ってもする人はすると思うけど、私はこうして毎日楽しいことを探して、できるだけ楽に闘っていくからよろしく。

わがまま気のまま

チェーンのカフェでフレンチトーストを食べていた。私は飲み物は食後に飲むタイプなので、紅茶は冷める一方だった。これは小さい頃から少食で、先に飲み物を飲むと食べ物がお腹に入らなくなるが、食べ物を先にしてお腹がいっぱいになっても飲み物なら入るから、というおかしな理由でついた癖だった。

紅茶はストレートが好きで、久々に帰省して家族でお茶をしたとき何も聞かずに誰かが私の紅茶に牛乳を入れたので少しムカッとしたことを思い出した。それほどムカッとしたわけではないしミルクティーも嫌いではないのでその時はそのまま美味しくいただいた。後でふと思い出して母と姉にその話をしたら、牛乳を入れたのは自分だと母が言ったので、なんだか申し訳なかった。私としては、カフェなどに行くと必ず飲み方を聞かれるし、自分で作ればもちろん思い通りになるので、何も聞かれず紅茶に牛乳を入れられるという出来事が久々に起こりびっくりした、ということをただ言いたかったのだが、多分そのニュアンスは伝わっておらず結果的に母を責めたようになったのではないかと思って後悔した。

目の前のカップルの男の方が、ジャケットを脱いで椅子にかけていたけれど、その内側からチラチラと、クリーニングのタグが覗いていた。かなりボロボロだった。ボロボロになるまで気付かずに着ているのだった。それか、そういうデザインかもしれない。

そういえば、昨日読み終わった本はクリーニング屋で働く女性が主人公だった。軽い恋愛小説が読みたいと思って本屋で手にしたが、読んでみると本当に軽い恋愛小説だったので、目的通りなのになんだかちょっと残念だった。へそ曲がり。後で知ったがその本は脚本家が書いたドラマの原作のようなもので、だから描写が映像的だった。あと目線が固定されないのも慣れていなくて気持ち悪かった。

フレンチトーストやワッフルのようなバターのきいた食べ物は大好きなのだが、途中で気持ち悪くなって食べられなくなる。それを分かっているのにメニューを見ると食べたくなって注文してしまう。半分くらい、一緒にいる人に食べてもらうことが多いけれど、途中で食べられなくなって食べてもらうというのはめちゃくちゃマナー的に悪いのでやめたい。具体的には、そういう食べ物を注文しないか、最初から半分に分けて食べてもらうかするべきだと思う。だけどやっぱり食べられるだけ食べたいから、大食いで、そういうのに寛容な人と仲良くしていきたい所存。

まぁそれは置いといて、今日はひとりだった。予測できた事態ではあるが、三分の一残ったフレンチトーストを見つめて私はうーんと唸った。休憩しよう。

気づけばクリーニングタグカップルは退席していて、目の前にはまた別のカップルが居た。私はお店で周りが気になるのでいつもできるだけ入り口や人がたくさんいる方に背を向けて座るようにしている。客も気になるが一番気になるのは店員の動きである。自分が飲食店でアルバイトをしているからだと思うが、忙しそうだなとか、この人何時から働いてるんだろうとかそういうしょうもないことを考えてしまう。考えたらだめなわけではないが、私はそういうことを考えるためにお店に入るわけではないから極力気にしないでいたい。気になるというのはどうにもならないが、こうやって座る位置を変えるだけで視界に入らなくなり、気にしないで済むなら、色々工夫するのも無駄じゃないと思う。

そうこうするうちに残りのフレンチトーストを食べ終えた。食べ終えてからクリームが添えられていたことに気付いたが、もうドロドロに溶けていた。人のクリーニングのタグには気付くのに自分のお皿のクリームには気付かない、私の目と頭はおかしいと思った。

IQが下がっていたときの日記

どんな気持ちでここに来ても受け入れてくれる中庭。


今朝は早起きした。午後までかかる用事があったのでお弁当を作って出かけたけれど、ギリギリでバスに行かれてしまったので一旦家に帰った。洗濯物を干して、散らかっていた部屋を片付けた。乗ろうとした1時間後のバスにも行かれてしまったのでもうその用事は諦めた。床に座ってお弁当を食べた後、腕が痛くなるまでキーボードを弾いた。15時から授業だった。身体が重くなってきて、頭もガンガンしだしたので学校に行くかどうか迷い始めた。トイレに座って少し泣いた。しくしく、とかわんわんじゃなくて、下を向いてじっとしていたら涙がぽたっと落ちるタイプの。でも、出かけなければならない時間までには立ち上がり靴を履くことができた。私は歩いて学校に来た。
教室に入ると、先に来ていた同級生たちが軽くざわめいた。時間ギリギリだったので、もう私は来ないと思っていたらしい。
授業の前半は眠たかった。発表者の話も、教授の話も全く頭に入って来ず、ただ家に帰ったらノートに書きたい言葉のことを考えていた。あと、好きな人と話したかった。ばったり会えたりしないかなと思った。その可能性はとても低いので、思い切って電話でもかけてみようかなと思った。授業の後半は面白かった。"同じだ"という形容動詞が変わった活用をするということを知った。驚いたことに授業は30分も早く終わったから、嬉しくなっておやつを買いに行った。特にお腹は空いていなかったけれど、無性にビスケットが食べたかった。ビスケットを買った。
ビニール袋をぶら下げて中庭に向かっていると、好きな人が歩いてくるのが見えた。目があった。私に向かって歩いてくる。私は、早く近づきすぎるとその分早く離れなければならないような気がして、できるだけゆっくり歩いて近づいて行った。その歩き方を見た彼は開口一番、疲れてるね、と言った。ゆっくり歩いたのはそのせいではないけれど、確かに私は疲れていた。多分、疲れていたからこそ彼に会いたかったのだ。彼も疲れているようだった。疲れているからテンションが異様に高いのだと言って、手を広げてぴょこぴょこ跳ねてみせた。
私は、次に彼に会ったら好きと言おうと思っていたのに、そんなことはすぐに忘れた。というか、覚えていたかもしれないが無理だった。今朝起きた時間の話とか、野菜の話とか、授業のこととか、当たり障りのない話を延々とまくし立ててしまった。言いたいことも言わずに。もっとも、そういう当たり障りない話をいつもしたいし、それを延々とできるところが好きなんだけれども、今日はもっと大切なことを言わなければならなかった。
いつも元気でいてほしいけれど、彼が疲れて誰かと話したくなるのなら、いつも疲れていてほしいとさえ思う。けれどそれは彼の幸せを無視した私の幸せである。彼の悲しみや苦しみを全部食べてあげられたらいいのに、とも思う。だけどそんなこと私にできるはずがなかった。私だけでなく他の誰にも、彼を助けることはできないと分かっていた。だから私は誰かと争うこともなく、静かに、遠くから彼を見ていた。しかしその安心もおかしな話であった。
次の授業に行かなければ、と彼が言った。がんばって、おつかれさま、またね。

私は中庭に来た。ベンチに座って、ノートに少し、言葉を書いた。ビスケットを食べた。木の写真を撮った。時折葉っぱが頭上から降ってきた。気付いたら暗くなっていた。ほとんど葉を落とした木の枝の隙間から星が見えた。私は片目をつぶって顔を動かし、星がぴったり枝に重なる位置で止まって星が見えないようにしてみた。顔を動かさなくても、つぶる目を変えると星がチカチカ光った。指先が冷えてきた。待っていても彼は戻って来ない。私は立ち上がった。